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サクッとJIS機械設計・配管計算ツール

ねじ・締結

ボルトの締め付けトルクの計算(JIS B 1083)

JIS B 1083(ねじの締付け通則)の式で、ボルトのトルク係数 K・降伏締付け軸力 Fy・降伏締付けトルク Ty を計算します。摩擦係数には既定の値を置かず、規格の表と同じ 0.08〜0.45 の10段階を並べました。

たとえば M10・強度区分 8.8 の Ty は、摩擦係数 0.08 で 40.3 N·m、0.15 で 62.6 N·m です。Ty はボルトが降伏し始める境のトルクで、締付けの推奨値ではありません。

ページの更新日

  • JIS B 1083:2008
  • JIS B 1051:2014
  • JIS B 0205-4:2001
01

条件

強度区分

9.8 は M16 までです。4.6・5.6・5.8 は規格の表B.1 に無く、選べません。

既定では、表の各行のねじ面の摩擦係数 μth と同じ値で計算します。座面だけ違うときに選んでください。

02

降伏締付けトルク Ty(M10・8.8)

Ty はボルトが降伏し始める境のトルクで、締付けの推奨値ではありません。

実際の摩擦係数が見込みより小さいと、表の Ty より小さいトルクでもボルトは降伏します。締め付けるトルクは、設計で決めた締付け力と摩擦係数の幅から決めてください(下の 03)。

座面の摩擦係数 μb は、各行のねじ面の μth と同じ値です。降伏締付け軸力 Fy は、ねじ面の摩擦係数だけで決まります(式(7))。座面の μb で変わるのは、K と降伏締付けトルク Ty です。

M10・強度区分 8.8 の、ねじ面の摩擦係数ごとのトルク係数・降伏締付け軸力・降伏締付けトルク
摩擦係数μth = μbトルク係数K降伏軸力Fy [kN]降伏トルクTy [N·m]
0.080.11734.540.3
0.100.14033.747.2
0.120.16332.953.7
0.150.19831.662.6
0.200.25629.475.2
0.250.31427.285.4
0.300.37225.193.5
0.350.43023.2100
0.400.48821.5105
0.450.54720.0109

表の行を押すと、その行の値を文章でコピーできます。

σy は 0.2 %耐力 Rp0.2 の最小値で 640 MPa、有効断面積 As は 58 mm² です(JIS B 1051 の表3・表4)。

Fy の値は、規格の附属書B(参考)の表B.1 の計算値と同じになります。表B.1 は軸力の表で、トルクの値は載っていません。

JIS B 1083:2008(ねじの締付け通則) 5.1 式(2)・5.3 式(7)・5.4 式(8) から計算

JIS B 1083:2008(ねじの締付け通則) 附属書A(参考)表A.2−トルク係数Kを求めるための補助表(d・P・d2・Db)・附属書B(参考)表B.1−ねじ面の摩擦係数μthに対する降伏締付け軸力Fyの計算値(並目ねじの場合) 準拠

JIS B 1051:2014(炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質―強度区分を規定したボルト,小ねじ及び植込みボルト―並目ねじ及び細目ねじ) 表3 おねじ部品の機械的及び物理的性質(σy)・表4 最小極限引張力−並目ねじ(As,nom) 準拠

計算ロジック

M10・8.8・μth = 0.15(μb も同じ) の行で計算すると、次のとおりです。

トルク係数 K(式(2))

K = (1/d)(P/2π + 0.577 μth d2 + 0.5 μb Db) = (1/10)(1.5/2π + 0.577 × 0.15 × 9.026 + 0.5 × 0.15 × 12.815) = 0.1981

Db = (dw,min + dh)/2 = (14.63 + 11)/2 = 12.815 mm

降伏締付け軸力 Fy(式(7))

dAs = √(4As/π) = √(4 × 58/π) = 8.593 mm

Fy = σy As / √(1 + 3[(3/dAs)(P/2π + 0.577 μth d2)]²) = 640 × 58 / √(1 + 3[(3/8.593) × 1.0199]²) = 37120 / 1.1749 = 31595 N → 31.6 kN

降伏締付けトルク Ty(式(8))

Ty = K Fy d = 0.1981 × 31595 × 10 / 1000 = 62.6 N·m

d
ねじの呼び径 [mm]
P
ピッチ [mm](並目)
d2
有効径 [mm](JIS B 0205-4)
Db
座面の摩擦に対する直径 [mm](表A.2。六角ボルト・並形の二面幅・2級のボルト穴)
μth・μb
ねじ面・座面の摩擦係数
σy
ボルトの降伏の値 [MPa](JIS B 1051 の表3 の最小値)
As
有効断面積 [mm²](JIS B 1051 の表4 の As,nom)
dAs
有効断面積に等しい面積の円の直径 [mm]

式(7) は、ねじ部の全断面が降伏するとして求めた値です(5.3)。σy には規格の最小値を使っています。

Fy は規格の表B.1 と同じ桁(有効数字3桁で、小数は1桁まで)で示しています。K は表A.1 と同じ小数3桁です。Ty の桁は JIS に決まりが無いため、有効数字3桁に丸めました。

03

目標締付けトルク TA(締付け力の範囲が決まっている場合)

JIS B 1083 の 6.2.2.1 の手順です。設計で決めた締付け力の下限 FL・上限 FH、摩擦係数の幅、トルクのばらつき δT を入れてください。式(9) を満たすかを確かめ、式(11) で TA を出します。

座面の径 Db は、表A.2(参考)の六角ボルト・2級のボルト穴の値です。規格の 6.2.2.1 c) 1) は、Db を JIS B 1084 の方法で求めるとしています。

kN
下限の入れ方
kN
%

締付け用具・締付けの止め方によるばらつきで、トルクレンチの目盛の誤差も含みます。規格の注によると、JIS B 4650 はトルクの誤差率を ±3 %(ダイヤル形の精密級は ±1 %)としています(B 4650 が今も有効かは未確認です)。

FH・FL(または Q)・μth の最小と最大・δT を入れると、TA を出します。

JIS B 1083:2008(ねじの締付け通則) 6.2.2.1 式(9)〜式(13) から計算

規格の 6.2.2.2 には、降伏締付け軸力をねらって高い締付け力を与える決め方(式(14)・式(15))もあります。実際の摩擦係数が見積もりより小さいとボルトが降伏するため、このページでは計算しません。

04

使える範囲と注意

  • 規格の主な対象は、炭素鋼・合金鋼のボルト・小ねじ・植込みボルトとナットです(1章)。一般用メートルねじの山形をもつ、ほかのねじ部品の組合せにも使えるとされています。植込みボルトの植込み側、引張力を受けない止めねじ、タッピンねじのようにめねじを成形するねじ、回り止め機能付きのねじには使えません。
  • σy・As には JIS B 1051(炭素鋼・合金鋼)の値を使っています。ステンレスのボルトは、このページでは計算できません。
  • 並目ねじだけを計算します。細目ねじは規格の表A.2・表B.1 に無く、選べません。
  • 座面の径 Db は、表A.2 の六角ボルト(並形の二面幅)と2級のボルト穴(面取りなし)の値です。六角穴付きボルトやフランジ付きのボルト、座金を入れたときは Db が変わり、K も変わります。
  • 摩擦係数の目安は JIS B 1083 にありません。規格は、JIS B 1084 の方法の試験でトルク係数 K を求めるか、既存のトルク係数・摩擦係数のデータを使う決め方を挙げています(6.2.2・6.2.2.1 の a)〜c))。
  • 伸びボルトのように円筒部がいちばん細いボルトは、式(7) の dAs・As をその断面の直径・断面積に置き換えます(5.3)。このページの値は、ねじ部がいちばん弱いボルトのものです。
  • K は呼び径ごとの計算値です。規格の表A.1 の K は19サイズの平均なので、少し違います(μ が 0.15 のとき、M10 は 0.198、表A.1 は 0.196)。
05

関連する計算・寸法表

解説・よくある質問

締め付けトルクと軸力の関係は?

弾性域で締めるときは、締付けトルク T と締付け力(軸力)F の比が一定で、T = K F d になります(JIS B 1083 の式(1))。d はねじの呼び径、K はトルク係数です。

K はピッチ・有効径・座面の径と、ねじ面・座面の摩擦係数から決まります(式(2))。M10 で摩擦係数が 0.15 なら、K は 0.198 です。

締め付けトルクのうち、摩擦に使われるのはどれくらい?

大部分が摩擦に使われます。M10 で摩擦係数が 0.15 のとき、式(2) の括弧の中はピッチの項 0.239 mm・ねじ面の摩擦 0.781 mm・座面の摩擦 0.961 mm です。

ねじ面と座面の摩擦の分は合わせて 88 %で、ボルトを伸ばす力になるのは残りの 12 %だけです。規格の 6.2.1 にも、締付けトルクの90 %前後が摩擦で消費されると書かれています。

同じトルクで締めても、軸力は同じ?

摩擦係数が違えば、軸力は大きく変わります。例は、M10・8.8 を摩擦係数 0.10 のときの Ty(47.2 N·m)で締めた場合です。摩擦係数が 0.10 なら軸力は Fy の 33.7 kN ですが、0.20 なら 18.4 kN にとどまります。

逆に、摩擦係数 0.20 と見込んだ Ty(75.2 N·m)で、実際は 0.10 のボルトを締めると、計算上の軸力は 53.7 kN です。Fy の 33.7 kN を超えるので、その前にボルトが降伏します。

JIS に標準の締め付けトルク表はありますか?

ありません。JIS B 1083 にあるのは式と、附属書(参考)の K の計算例(表A.1)・降伏締付け軸力の計算値(表B.1)です。表B.1 も軸力の表で、呼び径ごとのトルクは載っていません。締付け試験方法の JIS B 1084 にも、締付けトルクの表はありません。

出回っている締付けトルクの表は、工具メーカーなどがトルク係数と目標の軸力を決めて計算した値です。T系列(T・0.5T・1.8T・2.4T など)もその1つで、JIS B 1083 には T系列の語も表もありません。表を使うときは、どのトルク係数と目標の軸力で計算した値かを確かめてください。

降伏締付けトルクで締めてもよい?

Ty はボルトが降伏し始める境のトルクで、締付けの推奨値ではありません。摩擦係数が見込みより小さいと、Ty より小さいトルクでもボルトが降伏します。締め付けるトルクは、設計で決めた締付け力の範囲から 6.2.2.1 の手順で決めてください(このページの 03)。

規格の 6.2.2.2 には、降伏締付け軸力をねらって、なるべく高い締付け力を与える決め方もあります。摩擦係数の最小値を見誤るとボルトが降伏するため、このページでは計算していません。

摩擦係数はどう決める?

JIS B 1083 には、潤滑や表面処理ごとの摩擦係数の目安がありません。規格の a) は、JIS B 1084 の方法の試験でトルク係数 K を求める決め方です。b)・c) では、表面状態と潤滑が実際と同じとみなせるときに、既存のトルク係数(b))・摩擦係数(c))のデータを使います(6.2.2・6.2.2.1)。

幅を持たせるときは、見込んだ範囲でいちばん小さい μth の行の Ty を見ておくと、締めすぎの危険が分かります。実際の摩擦係数がその値まで下がると、そのトルクでボルトが降伏し始めるためです。

ステンレスのボルトや細目ねじにも使える?

このページでは計算できません。σy・As を JIS B 1051(炭素鋼・合金鋼)の値で計算しているので、ステンレスのボルトは範囲の外です。細目ねじは、規格の表A.2・表B.1 に無いため選べないようにしました。

JIS B 1083 の1章は、一般用メートルねじの山形をもつほかのねじ部品の組合せにも、この規格を使えるとしています。

この計算の確かめ方

式と表A.2 の値は、規格票の写しの表を2回、別々に読み取って突き合わせ、照合しました(2026年11月)。

このページの計算で、附属書B の表B.1(降伏締付け軸力の計算値)の1110欄を、表の桁で再現できることを確かめています。附属書A の表A.1(トルク係数の計算例)の100欄も同じです。表B.1・表A.1 を載せた公開資料は見つからず、見比べていません。

照合に使った資料は、編集方針に書いています。