投影図の名前と6つの方向
品物を真正面・真上・左右・真下・真後ろから見た形を、平らな図にしたものが投影図です。見る向きは a〜f の6つで、JIS B 0001 では見る向きごとに名前が決まっています。
| 記号 | 見る向き | 名前 |
|---|---|---|
| a | 前方から | 正面図 |
| b | 上から | 平面図 |
| c | 左から | 左側面図 |
| d | 右から | 右側面図 |
| e | 下から | 下面図 |
| f | 後方から | 背面図 |
正面図を決めると、ほかの図は正面図と 90° か、その倍数の角をなす向きから見た図になります。品物を完全に表すには6方向の図が要りますが、実際には6つ全部は要らない、と JIS Z 8315-2 は書いています。
JIS B 0001:2019(機械製図) 8.2 図12 の投影図の名称
JIS Z 8315-2:1999(製図―投影法―第2部:正投影法) 4.1・4.2 表1 準拠
正面図はどの向きを選ぶ?
正面図(a の図)は主投影図とも呼び、品物の形や機能をいちばんよく表す向きを選びます。品物を置く向きは図面の目的で変わる。組立図のように機能を表す図面では使うときの状態、部品図のように加工のための図面では、加工でいちばん図面を使う工程で置いた状態です。特別な理由が無ければ、横長に置いた状態で描きます。
正面図を補う図はできるだけ少なくし、正面図だけで表せる品物にはほかの図を描きません。かくれ線(見えない部分の線)をなるべく使わずに済む図を選ぶことも、JIS B 0001 は求めています。
JIS B 0001:2019(機械製図) 10.1.1・10.1.2 の主投影図と投影図の数
第三角法と第一角法はどう違う?
違うのは、正面図のまわりに置く図の位置です。第三角法では、見た側にその図を置きます。上から見た平面図は正面図の上、右から見た右側面図は右。第一角法はその逆で、平面図が下、右側面図が左に来ます。
背面図だけは置き場所を選べます。第三角法では左側面図の左か右側面図の右、第一角法では右側面図の左か左側面図の右に、都合のよいほうへ置いてかまいません。
JIS Z 8315-2 は、第三角法を、品物を見たときの図形を品物の手前の面に示す方法として説明しています。第一角法は、品物を、見る人と投影面の間に置き、品物の奥にある投影面に図形を示す方法です。
機械製図の JIS B 0001 は 8.1 で投影図を第三角法で描くとし、紙面の都合などで正しい配置に描けないときや、一部を第三角法の位置に描くとかえって分かりにくいときは、第一角法か矢示法(やしほう)を使ってよいとしています。製図総則の JIS Z 8310 の投影法の箇条(10.1)と JIS Z 8315-2 には、どちらの角法を使うかの文はありません。
矢示法は、見る向きを矢印とラテン文字の大文字で示し、その向きから見た図を好きな位置に置く描き方です。図の名前の大文字は、図の真下か真上に書きます(JIS B 0001 8.5)。
JIS B 0001:2019(機械製図) 8.1・8.3 図13・8.4 図15・8.5 準拠
JIS Z 8315-2:1999(製図―投影法―第2部:正投影法) 5.1 図3・5.2 図6 準拠
JIS Z 8310:2010(製図総則) 10.1 の投影法
どちらの角法かは記号で見分ける
図面がどちらの角法で描かれているかは、表題欄の中かその近くにある投影法の記号で分かります。第三角法で描くときも第一角法で描くときも、この記号を示すことになっています(JIS B 0001 8.3・8.4)。
記号は、先を切った円すいを横から見た台形と、軸の向きから見た二重の円を並べたものです。第三角法は左に円、右に台形。第一角法は左右が入れ替わり、台形が左、円が右になります。台形の細いほうが左を向くのは、どちらも同じです。
記号の大きさの比は、JIS Z 8315-2 の附属書A(規定)で決まっています。h を図面の数字・文字(小文字)の高さとして、外側の円の直径と台形の長い辺・長さが H、台形の短い辺が h。台形の長い辺と円の隙間は 3d で、d は線の幅です。
| h文字の高さ | d線の幅 | H直径(大)と長さ |
|---|---|---|
| 3.5 | 0.35 | 7 |
| 5 | 0.5 | 10 |
| 7 | 0.7 | 14 |
| 10 | 1 | 20 |
| 14 | 1.4 | 28 |
| 20 | 2 | 40 |
どの列も H は h の2倍、d は h の 1/10 です。
JIS B 0001:2019(機械製図) 8.3 図14・8.4 図16 の投影法の記号
JIS Z 8315-2:1999(製図―投影法―第2部:正投影法) 附属書A 図A.1・図A.2・表A.1 準拠
線の種類で何を表しているか
図面の線は、太さと形(実線・破線・鎖線)の組合せで意味が決まっています。読むときにまず覚えたいのは次の線です。
| 線 | 名前 | 表すもの |
|---|---|---|
| 太い実線 | 外形線 | 見える部分の形 |
| 細い実線 | 寸法線・寸法補助線・引出線(参照線を含む) | 寸法を記入する線、寸法を記入するために図形から引き出す線、記述・記号などを示すための引出線 |
| 細い破線か太い破線 | かくれ線 | 見えない部分の形 |
| 細い一点鎖線 | 中心線 | 図形の中心 |
| 細い二点鎖線 | 想像線 | 隣の部分や工具の位置を参考に示す。動く部分の位置や加工前後の形なども表す |
| 細い一点鎖線で、端と曲がる所を太く | 切断線 | 断面図にした断面の位置を、対応する図に示す |
| 細い実線を規則的に並べる | ハッチング | 断面の切り口など、ほかと区別する部分 |
線の太さは 0.13・0.18・0.25・0.35・0.5・0.7・1・1.4・2 mm の9つから選びます。細線・太線・極太線の太さの比は、一般に 1:2:4。細線を 0.25 mm にすれば、太線は 0.5 mm です。
2種類以上の線が同じ所に重なるときは、外形線・かくれ線・切断線・中心線・重心線・寸法補助線の順に、先のものを優先して描きます。表5 にない線を使ったときは、その線の用途を図面に注記することになっています。
表5 の線の種類と用途(25行)を見る
| 名前 | 線の種類 | 用途 |
|---|---|---|
| 外形線 | 太い実線 | 対象物の見える部分の形を表す |
| 寸法線 | 細い実線 | 寸法を記入する |
| 寸法補助線 | 細い実線 | 寸法を記入するために図形から引き出す |
| 引出線(参照線を含む) | 細い実線 | 記述・記号などを示すために引き出す |
| 回転断面線 | 細い実線 | 図形の中に、その部分の切り口を 90° 回して表す |
| 中心線 | 細い実線 | 図形に中心線(図例1 の 4.1)を簡略化して表す |
| 水準面線 | 細い実線 | 水面・液面などの位置を表す |
| かくれ線 | 細い破線又は太い破線 | 対象物の見えない部分の形を表す |
| ミシン目線 | 跳び破線 | 布・皮・シート材の縫い目を表す |
| 連結線 | 点線 | 制御機器の内部リンク、開閉機器の連動動作などを表す |
| 中心線 | 細い一点鎖線 | a) 図形の中心を表す b) 中心が移動する中心軌跡を表す |
| 基準線 | 細い一点鎖線 | 特に位置決めのよりどころであることをはっきり示す |
| ピッチ線 | 細い一点鎖線 | 繰返し図形のピッチをとる基準を表す |
| 特殊指定線 | 太い一点鎖線 | 特殊な加工をする部分など、特別な要求事項を適用する範囲を表す |
| 想像線 | 細い二点鎖線 | a) 隣接部分を参考に表す b) 工具・ジグなどの位置を参考に示す c) 可動部分を移動中の特定の位置や移動の限界の位置で表す d) 加工前・加工後の形を表す e) 繰返しを示す f) 図示した断面の手前にある部分を表す |
| 重心線 | 細い二点鎖線 | 断面の重心を連ねた線を表す |
| 光軸線 | 細い二点鎖線 | レンズを通る光軸を示す線を表す |
| パイプライン、配線、囲い込み線 | 一点短鎖線・二点短鎖線・三点短鎖線 | 水・油・蒸気・上下水道などの配管経路を表す |
| パイプライン、配線、囲い込み線 | 一点長鎖線・二点長鎖線・三点長鎖線・一点二短鎖線 | 水・油・蒸気・電源部・増幅部などを区別するため、線で囲い込んで機能を示す |
| パイプライン、配線、囲い込み線 | 二点二短鎖線・三点二短鎖線 | 水・油・蒸気などの配管経路を表す |
| 破断線 | 不規則な波形の細い実線又はジグザグ線 | 対象物の一部を破った境界、又は一部を取り去った境界を表す |
| 切断線 | 細い一点鎖線で,端部及び方向の変わる部分を太くした線 | 断面図を描くとき、その断面の位置を対応する図に表す |
| ハッチング | 細い実線で,規則的に並べたもの | 図形の限られた特定の部分を他と区別する(例: 断面図の切り口) |
| 特殊な用途の線 | 細い実線 | a) 外形線とかくれ線の延長を表す b) 平面であることを X 字状の2本の線で示す c) 位置をはっきり示す・説明する |
| 特殊な用途の線 | 極太の実線 | 圧延鋼板・ガラスなど薄肉部を単線で図示する |
JIS B 0001:2019(機械製図) 6.1・6.2 表5・6.3 の線の太さ・種類と、重なるときの順
JIS Z 8312:1999(製図―表示の一般原則―線の基本原則) 4.1 の線の太さ
尺度 1:2 は何を表す?
尺度は A:B の形で書き、A が図に描いた長さ、B が品物の実際の長さです。1:2 は実物の半分の大きさで描いた縮尺、2:1 は2倍の大きさの倍尺、1:1 が現尺。尺度の値は、JIS B 0001 の表6 にある次の推奨尺度から選びます。
| 種別 | 尺度 |
|---|---|
| 倍尺 | 50:1 20:1 10:1 5:1 2:1 |
| 現尺 | 1:1 |
| 縮尺 | 1:2 1:5 1:10 1:20 1:50 1:100 1:200 1:500 1:1 000 1:2 000 1:5 000 1:10 000 |
使った尺度は表題欄に書きます。1枚の図面で複数の尺度を使うときは、主となる尺度だけを表題欄に書き、ほかの尺度は部品の照合番号や詳細図の文字(A部など)の近くに書く。図形が寸法に比例していない図面には、「非比例尺」「NOT TO SCALE」などとその旨を明記することになっています。見誤るおそれが無ければ、尺度の表示は省いてよい(JIS B 0001 9 c))。
参考: 表6 に無い 1:1.5・1:3・1:4 などは、JIS Z 8314 の附属書1 にある「中間の尺度」です。やむを得ず推奨尺度を使えないときは中間の尺度を選んでよいこと、表1 より大きい倍尺・小さい縮尺が特に要るときは推奨尺度に 10 の整数乗を掛けた尺度にすることは、JIS Z 8314 の表1 の下の備考にあります。JIS B 0001 の尺度の箇条(箇条9)には、この記述はありません。
JIS B 0001:2019(機械製図) 9 a)〜c) 表6 の尺度
JIS Z 8314:1998(製図―尺度) 4.1・4.2・表1・附属書1 準拠
表題欄と輪郭線はどこにある?
表題欄は図面の右下隅にあります。書く事項は、図面番号・図名・企業(団体)名・責任者の署名・図面作成年月日・尺度・投影法など(JIS B 0001 5.2 c))。このうち図面番号・図名など図面を特定する部分は、長さ 170 mm 以下でなければなりません(JIS Z 8311 5.2)。
投影法の記号のほかに、公差の書いていない寸法に当てる普通公差の規格番号と等級記号(又は数値)も、表題欄の中かその近くにまとめて書くことになっています(JIS B 0001 11.1 l))。普通公差の値は普通公差のツールで引けます。
用紙の縁の少し内側には、太さ 0.5 mm 以上の輪郭線があり、その内側が図を描く範囲です。余白は A0・A1 で 20 mm 以上、A2〜A4 で 10 mm 以上。とじる場合は、とじる側の辺を 20 mm 以上にします。用紙の4辺の中央にある短い線は中心マークで、複写やマイクロフィルムの撮影で位置を合わせるための印です(太さ 0.5 mm 以上)。
JIS B 0001:2019(機械製図) 5.2 b)・c)・e) 表4・11.1 l) 準拠
JIS Z 8311:1998(製図―製図用紙のサイズ及び図面の様式) 5.2・7 準拠
この記事の確かめ方
記事の配置・線・尺度・記号の値は、JIS B 0001:2019 と JIS Z 8310・Z 8311・Z 8312・Z 8314・Z 8315-2 の規格票の表と図を2回、別々に読み取って照合しました(2026年11月)。図面の書き方を解説した公開資料7つ(発行元は4つ)とも見比べ、28項目のうち25項目が一致しています。違った3つは資料側の書き方です。側面図に付ける文字が JIS と逆の資料、三面図が最低限要ると書く資料(JIS B 0001 10.1.2 b) は、正面図だけで表せる品物にほかの図を描かない)、表題欄を右上に置いてよい場合を JIS より広く書く資料がありました。
JIS Z 8310・Z 8311・Z 8312・Z 8314・Z 8315-2 の5つは、照合した年版が現行かどうかを確かめていません。
照合に使った資料は、編集方針に書いています。